長年愛用してきたヘッドフォンでAKGのK240というのがあります。実は我が家での初代と二代目があり、まだ初代をパッドを交換して、コードを補強して愛用中です。正確には、この二日前に久々にスマホと接続して、使い出しました。そこでの気づきを、少々。
巷では、スマホとブルートゥース接続のイヤーフォンで音楽を、音を、聞く機会が多い様に思います。しかしながら、みなさん承知の通り電波で信号を送信するせいで発信元のスマホと時差があります。これにより、映像とあわせての使用は不都合が生じる場合があります。また、物理的な制限としてあまり大きなものはイヤーフォンとして装着できないこともあります。また、ノイズキャンセリングと、マイクなどの機能が備わった製品も多くあります。つまり、物理的な制限があるにもかかわらず、マーケットの要求に応えて、高性能な製品が続々と発売されています。
また、ブルートゥース接続でノイズキャンセリング付きの、耳を覆うタイプのヘッドフォンもあります。そして、音を立体的に感じさせるための新たな技術を投入した最新の企画なども広告に謳われてる様です。もちろん、その様な最新の規格にあわせた有名企業の製品は押し並べて高価な様です。
さて、かたや欧州の企業で長年製造されてきたヘッドフォンでAKGのK240ですが、スペックを見ていたら、最新のモデルになって出力音圧の表示が少し高くなっていました。昔の記憶によれば、出力音圧は89dBで、標準的な他社のヘッドフォンに比べると少し低めの表現でした。つい先日、久々に使った古いモデル(AKGのK240の我が家の初代)は、出力音圧スペックを犠牲にして一体何をしたかったのかを、考えたら、思い浮かんだのが、音の表現ではなかろうか、と。
低音から高音までの理想的なバランスは各社独自の考え方により製品の個性があり、それが各社の独自性と考えられていたと。ですので、カタログスペックをチューニングするより、音楽を正しく届けるために、音の聞こえ方をチューニングしたのでは、という仮説を思いつきました。音楽表現のために、表現できる音のバランスを低い音圧に合わせることで、バランスさせたのではと。
昔々、正体の解らない趣味のオーディオを極めようと少し情熱を注いでいた頃には、結局は物量を投入した高級オーディオにしか出せない音があり、それは価値があったのです、昔は。しかし、当時聴覚的に良い音を届けてくれたヘッドフォンは、今も発売されていて、しかも、最新スペックのイヤーフォンの3分の1で発売されているのを考えると、どちらの商品も優れた商品なのでしょうけれども、その時々によって商品価値が変わるということを見せてくれました。ロングライフを実現した商品は、言い換えれば、優れた製品は長年に渡り生き残るということ。マーケットに支持されて作り続けられるということ。
工業デザインだけのことではなく、長年支持されてづけてきたデザインには哲学が含まれる場合があるということを、考えた次第です。
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