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英国のデザイン政策を調べていたら、色々考え始めた。8:redfrog greenfrog STUDIO

redfroggreenfrog
11 分前
読了時間: 7分

では、誰がその「つなぐ人」になるのか?


ここまで、英国のCreative Industries Clustersについて見てきました。


大学がある。企業がある。研究者がいる。行政や地域の支援機関がいる。


そして、そこに公的資金が入り、研究開発が行われ、新しい商品やサービス、仕事が生まれていく。


第6回では、こうしたクラスターの「場所」には、大学などのanchor institution(中核機関)があることを見ました。


第7回では、そもそも英国のクリエイティブ産業そのものが、現在では約1,458億ポンド、英国のGVAの約5.5%を占める規模になっていることを確認しました。


では、ここで一つ気になることがあります。


「大学」と「企業」と「研究」を、実際には誰がつないでいるのでしょうか。


仕組みだけでは、人は動きません。研究者が企業に連絡する。企業が大学に相談する。行政が事業者を紹介する。研究者とデザイナーが一緒にプロジェクトを始める。


新しい技術を持った人と、それを使いたい企業が出会う。


こうしたことは、制度の説明だけを読んでいると、まるで自然に起こっているようにも見えます。


でも、実際にはそうではない。


そこには、おそらく「つなぐ仕事」をしている人がいます。「Cluster Manager」という仕事。


UKRIの資料を見ていて面白いのが、Cluster Managerという役割です。


たとえば英国のSTFC(Science and Technology Facilities Council)のクラスターでは、各クラスターに専任のCluster Managerが置かれています。


UKRIの説明では、このCluster Managerは、その分野について専門的な知識や経験を持ち、インキュベーション、アクセラレーション、資金、技術パートナー、専門知識などを支援するだけでなく、「peopleの間の貴重なconnectionsを提供する」役割だと説明されています。(UK Research and Innovation)


つまり、クラスターを「建物」や「地域」として考えるだけではなく、人と人との関係をつくる仕事として考えているわけです。


これは、意外と高度な仕事なのではないか。


考えてみると、企業と大学をつなぐことは、単純な「紹介」ではありません。企業側は、「この技術を使って何か新しいことができないか?」と考えているかもしれない。


一方、研究者側は、


「この研究テーマを実社会で試せないか?」と考えているかもしれない。しかし、この二人をただ会わせても、話が成立するとは限りません。企業は「研究」という言葉に距離を感じるかもしれない。研究者は「企業の都合」に振り回されることを警戒するかもしれない。そもそも、お互いが使っている言葉が違う。


そこで必要になるのが、翻訳する人なのではないでしょうか。


英国の評価報告にも「brokerage」が登場する。実際、Creative Industries Clusters Programmeの評価報告を読むと、この点がかなりはっきり出てきます。


評価では、クリエイティブ企業と大学の知識基盤との間の「brokerage(仲介)」や、企業が応用研究に参加する際の申請段階からの支援、さらにプロジェクトを継続的に支えるproducerの役割などが重要だったとされています。


特にクリエイティブ産業では、他の産業分野に比べて大規模な研究開発企業が少ないため、従来型の「企業が研究機関に研究を依頼する」というモデルだけでは対応しにくかった。


そこで、企業側が研究に参加するための入口をつくり、大学との間を取り持ち、プロジェクトの進行を支える人が必要になった。評価報告では、こうした支援によって、企業が初めて応用研究に参加できた事例も確認されています。(UK Research and Innovation)


ここは、とても興味深いところです。


つまり、「研究資金があるから企業が研究をする」のではない。その前に、「企業が研究に参加できる状態をつくる人」が必要だった。ということです。そして、現在の制度にもその役割が残っている。これは過去の制度だけの話でもありません。


2026年のCreative Industries Clusters Round 2を見ると、UKRIはクラスターの人員構成について、研究者だけではなく、finance、communications、eventsなどの運営機能に加えて、

producerやindustry-focused rolesも想定しています。つまり、研究をする人だけではなく、

研究と産業をつなぐ人をクラスターの構成要素として考えているわけです。(UK Research

and Innovation)


ここまで来ると、少し見方が変わってきます。


Creative Clusterというものは、「大学+企業+行政+研究費」という構造だけではない。その間に、関係をつくる人がいる。そして、その人の仕事は、「誰かを誰かに紹介する」だけではない。


「翻訳」する


企業の課題を研究テーマに翻訳する。研究成果を企業が理解できる言葉に翻訳する。技術を商品やサービスの可能性に翻訳する。地域の課題をプロジェクトに翻訳する。そして、「この人と、この人を会わせたら何か起きるかもしれない」という関係を見つける。



そう考えると、Cluster ManagerやProducerという仕事は、実はかなりクリエイティブな仕事なのかもしれません。


では、この仕事には大学が必要なのか?


ここで、僕自身の仕事に少し戻ってみます。

展示会の仕事では、企業から、「この商品をどう見せればいいでしょう?」と相談されることがあります。しかし、本当の課題は、展示台の形や壁面のデザインではないことがあります。

そもそも、「この会社は何を伝えたいのか?」「誰に伝えたいのか?」「この商品は、会社にとって何なのか?」「お客様にどんな体験をしてもらいたいのか?」というところから考えないと、空間は決まりません。


つまり、僕の場合は、企業の中にあるものを、空間という別の言語に翻訳する。という仕事をしていることになります。


そして、ここまで英国のクラスターについて調べてきて、少し似た構造があることに気づきました。


クラスターの「つなぐ人」も、企業と研究を、研究と商品を、人と人を、それぞれ別の言葉から別の言葉へ翻訳している。もしかすると、クラスターは「小さく」できるのではないか。もちろん、一人の人間が大学、研究機関、行政、企業、投資家を全部代替できるわけではありません。


Creative Industries Clusterのような大きな仕組みには、大きな資金も、研究設備も、組織も必要です。

でも、その中の一部の機能なら、もっと小さくできるのではないか。そう考えることはできそうです。


たとえば、

地域の企業を知っている。研究者や大学の人を知っている。デザイナーやクリエイターを知っている。行政の制度もある程度わかる。企業の言葉を理解できる。研究者の言葉も理解できる。

そして、「この会社と、この人をつないだら面白いかもしれない」と考えられる。


さらに、出会わせるだけではなく、

「では、この二者で何を試してみましょうか?」と、小さなプロジェクトに変換できる。もしそういう人が地域に一人いたら。それは、小さな意味での「Cluster Manager」のようなものになるのではないでしょうか。「場所」ではなく「関係」をデザインする。


ここまで考えると、僕が最初に持っていたCreative Clusterへの興味も、少し変わってきました。


最初は、

「英国にはCreative Clusterという仕組みがある。日本にも同じものをつくれないだろうか?」と考えていました。でも、今は少し違います。重要なのは、同じ制度を日本に持ってくることではない。

英国の制度を分解してみると、

・研究する人がいる・企業がいる・資金がある・場所がある・そして、それらをつなぐ人がいる

という構造が見えてきます。


その中で、

「つなぐ人」だけなら、もっと小さな単位でもつくれるのではないか。そして、それは必ずしも大学の中にいる必要もないのではないか。もしかすると、地域のデザイナーでもいい。企業支援をしている人でもいい。クリエイターでもいい。行政経験者でもいい。あるいは、複数の領域を行き来してきた個人でもいい。重要なのは肩書きではなく、異なる世界の間を行き来できること。


そして、

「問い」をつくり、「人」をつなぎ、「プロジェクト」に変えること。なのかもしれません。



次に考えたいこと

ここまで来ると、次の疑問が出てきます。「では、そういう人は、どうやって地域に生まれるのか?」たまたま能力のある人が一人いるだけでは、仕組みにはなりません。その人が活動できる資金はどこから来るのか。誰がその人を必要としているのか。企業は、なぜその人に相談するのか。行政は、その人に何を期待するのか。大学は、その人とどう付き合うのか。そして、その活動によって生まれた価値を、どうやって次の活動につなげるのか。


ここまで考えてくると、


「Creative Clusterをつくる」という話よりも、「地域の中に、関係をつくる人が育つ環境をどうつくるか」という話のほうが、僕には面白くなってきました。もしかすると、これが日本で考えるときの、もう一つの入口なのかもしれません。


次回は、この「つなぐ人」を支える仕組みについて、もう少し考えてみたいと思います。


※この連載は、筆者とAIとの対話を通じて生まれた思考の記録です。

 
 
 

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