英国のデザイン政策を調べていたら、色々考え始めた。12:redfrog greenfrog STUDIO
第2回 異なる専門家が出会うと、何が生まれるのか

専門家が集まれば、新しい価値は生まれるのか
デザインについて調べていると、デザイナーだけでなく、企業、研究者、行政、地域の人々など、異なる立場の人たちが協働する事例に出会う。
それぞれの専門性を持ち寄り、一つの課題に取り組む。言葉にすれば、ごく自然なことのように思える。
しかし、異なる専門家が集まれば、それだけで新しい価値が生まれるのだろうか。
企業には企業の事情があり、研究者には研究者の関心があり、行政には行政の役割がある。デザイナーにも、独自の視点や仕事の進め方がある。それぞれが専門性を発揮することは大切だ。一方で、専門性が高いからこそ、相手の考え方や言葉を理解することが難しい場合もある。
では、異なる立場の人たちが、互いの違いを保ちながら、一緒に何かを生み出すためには、何が必要なのだろうか。
違いがあるからこそ、見えてくるもの
例えば、ある地域の製造業が、新しい事業を考えているとする。
企業は、自社の技術や設備、これまで培ってきた経験を知っている。しかし、その技術が、これまでとは異なる市場でどのような価値を持つのかまでは、見えていないかもしれない。
そこにデザイナーが加わる。
デザイナーは、技術そのものだけでなく、使う人の行動や製品が使われる状況、社会の変化などに目を向けることができる。
研究者が加われば、技術的な可能性や新しい知見が得られるかもしれない。地域の人々が加われば、日常生活の中で感じている不便や、これまで見過ごされていた課題が見えてくるかもしれない。
それぞれが異なるものを見ている。だからこそ、一人では気づかなかった可能性が生まれることがある。
ここで重要なのは、それぞれの専門家が自分の知識を披露することではない。異なる視点が出会うことで、そもそも何が問題なのか、何を実現すべきなのかという、課題そのものの捉え方が変わる可能性があることだ。
最初に設定した課題を解決するだけでなく、何を課題とするべきかを考え直す。そのような過程にも、デザインが果たせる役割があるのではないだろうか。

協働とは、役割を分担することなのか
複数の専門家が一緒に仕事をする場合、それぞれの担当を決め、分業することは合理的だ。
しかし、協働は単なる分業と同じなのだろうか。
企業が課題を提示し、研究者が技術を開発し、デザイナーが製品の形を整え、行政が支援する。それぞれの役割を明確にすることは必要だが、それだけでは、最初に決めた枠組みの中で仕事が完結してしまうこともある。
一方、協働する過程で、企業が自社の技術の新たな可能性に気づいたり、研究者が研究成果の別の活用方法を発見したり、デザイナーが当初とは異なる課題を見いだしたりすることもあるだろう。
そのとき、当初の計画そのものが変わるかもしれない。
もちろん、すべての協働が新しい発見につながるわけではない。意見が合わないこともあれば、時間や費用の制約によって、実現に至らないこともある。
それでも、異なる専門性が出会うことには、あらかじめ決められた役割を超えて、問題の捉え方や解決方法を変える可能性がある。
では、その可能性を生かすためには、どのような関係が必要なのだろうか。
人と人をつなぐだけでは、不十分ではないか
CLICKNLは、クリエイティブ産業と、知識、イノベーション、社会的な課題などを結びつけるネットワークとして活動しているようだ。
オランダのクリエイティブ産業について調べる中で、CLICKNLの活動が気になった。
ここで考えてみたいのは、異なる分野の人々が関係を持つことと、その関係から新しい活動が生まれることの違いだ。
人を集めることと、人々が一緒に何かを生み出せるようにすることは、同じではない。
名刺を交換し、互いの仕事を知ることは、関係づくりの出発点になる。しかし、そこから具体的なプロジェクトが生まれるためには、共通の課題を見つけたり、役割を考えたり、必要な資金や技術を確保したりする必要がある。
場合によっては、参加者同士の考え方の違いを整理し、話し合いを進める人も必要になるだろう。
つまり、協働を生み出すには、人をつなぐことに加えて、つながった人たちが一緒に動き出せる環境を整えることが重要なのではないか。
そして、その環境をつくること自体にも、専門性が求められるのかもしれない。

つなぐ人は、何をしているのか
ここで、少し視点を変えてみたい。
異なる専門家が集まる場では、それぞれの専門性を持つ人たちだけでなく、その間をつなぐ人の存在も重要になる。
例えば、企業の経営者が「新しい商品を開発したい」と話したとする。その言葉を、そのまま商品開発の課題として受け取ることもできる。
しかし、話を聞いていくと、本当に解決したいのは、新商品の開発ではなく、既存事業の将来への不安なのかもしれない。自社の技術が市場で十分に評価されていないことに悩んでいるのかもしれない。あるいは、次の世代に引き継ぐべき企業の価値を、改めて整理したいのかもしれない。
もし、そうした背景を理解できれば、必要な協力者も、取り組むべき課題も変わってくる。
このとき求められるのは、単に専門家を紹介することではない。
相手の話を聞き、まだ明確になっていない課題を一緒に考え、必要に応じて異なる分野の人々を結びつけること。そして、関係者が互いの考えを理解し、次の行動に移れるようにすることだ。
こうした役割を担う人には、特定の専門分野に関する知識だけでなく、異なる立場の人の話を理解し、問いを立て、関係性を組み立てる力も必要になるだろう。
「優れた伴走支援者は、優れた問いを立てる。」
以前、そんな言葉を聞いたことがある。
協働を生み出すためには、答えを持つ専門家だけでなく、問いを一緒に考えられる人も必要なのではないだろうか。
出会いを、出会いだけで終わらせずに、社会の変化につなげるために。

デザインは、何を担うことができるのか
ここまで考えてくると、デザインを、製品や空間などを形にする仕事だけで捉えることは難しくなる。
もちろん、具体的なものを設計し、形にする専門性は欠かせない。しかし、その前段階にある課題の発見や、異なる専門性の接続、関係者との対話、実現に向けた仕組みづくりにも、デザインの考え方を生かせるのではないか。
社会には、一つの専門分野だけでは解決しにくい課題が数多くある。
地域産業の再生、環境問題、新しい事業の創出、公共空間のあり方。
こうした課題に取り組むとき、必要なのは、優れた専門家を一人見つけることだけではないのかもしれない。
異なる専門性を持つ人たちが出会い、互いの考えを理解し、共通の課題を見つけ、実際に試してみる。その過程を支える環境もまた、必要になる。
では、そのような環境は、どのようにつくられるのだろうか。
誰が人々をつなぎ、誰が問いを立て、誰が最初の実験を支えるのだろうか。そして、そこで生まれた知識や経験は、一度きりのプロジェクトで終わることなく、次の活動へと引き継がれていくのだろうか。

オランダの事例を調べることは、こうした問いを考える手がかりになると考えている。
特定の国の方法を、そのまま取り入れることが目的ではなく。
異なる人々が出会うことで何が生まれ、その可能性を社会の中で生かすために、どのような仕組みが必要なのか。
そのことを、もう少し考えてみたい。
※この連載は、筆者とAIとの対話を通じて生まれた思考の記録です。




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