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英国のデザイン政策を調べていたら、色々考え始めた。9:redfrog greenfrog STUDIO

redfroggreenfrog
19 時間前
読了時間: 9分

その「つなぐ人」を、誰がお金を払って支えるのか?




前回、Creative Clusterの中には、「人と人をつなぐ」ことを仕事にしている人がいることを見ました。


Cluster Manager。

Producer。

Industry-focused role。


名前はいろいろありますが、共通しているのは、研究者でも企業経営者でも行政職員でもない、その「間」にいる仕事です。


企業の課題を研究につなぐ。研究成果を企業につなぐ。人と人をつなぐ。そして、出会いをプロジェクトに変える。


ここで、もう一つ気になることがあります。

では、その人の仕事には、誰がお金を払うのでしょうか?


「人をつなぐ」という仕事は、成果が見えにくい仕事でもあります。商品をつくったわけではない。建物を建てたわけでもない。研究論文を書いたわけでもない。それでも、その人がいなければ始まらなかったプロジェクトがある。


こういう仕事を、どうやって継続的な仕事にするのか。


今回は、そこを見てみたいと思います。


最初のお金は、どこから来るのか


英国のCreative Industries Clusters Programmeは、2018年から2023年までの5年間、AHRCを中心に5,600万ポンドが投じられました。この段階では、かなり明確に「公的資金」です。しかし、面白いのは、その5,600万ポンドだけで終わっていないことです。


UKRIによれば、最初の9つのクラスターは、その後、2億7,000万ポンドを超える追加の公的・民間投資を呼び込んだとされています。


2025年のUKRI発表では、最初の9クラスターについて、5,600万ポンドのAHRC資金に対して、合計2億7,700万ポンドの追加投資が生まれたと説明されています。(UK研究イノベーション)


ここで重要なのは、「政府が全部払った」という話ではないことです。むしろ、最初の資金を使って、企業や研究者が参加できる環境をつくり、その環境に別の資金が入ってくる。という構造になっています。


公的資金は「完成品」を買っているのではない


これは、展示会の仕事に少し似ている部分があるような気がします。企業が展示会に出るとき、「ブースをつくってください」と依頼されます。しかし、良いブースをつくるためには、その前に、


「何を伝えるのか」

「誰に伝えるのか」

「どんな体験をつくるのか」を考える必要があります。


つまり、最終的な「ブース」という目に見えるものの前に、見えにくい準備があります。


Creative Clusterも少し似ています。研究成果という「完成品」だけにお金を出しているのではない。企業と研究者が出会う。課題を整理する。実験する。プロトタイプをつくる。事業化を考える。市場につなぐ。その一連の環境そのものに資金を入れている。だからこそ、前回見た「つなぐ人」にも役割が生まれます。そして、企業側にもお金を出してもらう


さらに興味深いのが、2026年に募集されたCreative Industries Clusters Round 2です。


この制度では、大学だけでなく、企業や地域の政策担当者、民間ファンディングなどを組み合わせることが明確に書かれています。さらに、クリエイティブ産業側のパートナーには、資金面またはそれ以外の形での**co-investment(共同投資)**が期待されています。つまり、「政府がお金を出すから、企業は参加してください」だけではない。企業自身も、「これは自分たちにとって意味がある」と判断して、資金や人材、設備、時間などを投入する。そういう関係をつくろうとしているわけです。(UK研究イノベーション)


小さな会社も参加できるようにする


ここは、個人的にはかなり興味深いところです。2026年のRound 2では、クラスターの予算の少なくとも30%を、企業側へ柔軟に配分する仕組みが設けられています。しかも、その資金は、フリーランサー、マイクロビジネス、中小企業も参加できるR&D活動に使えるとされています。(UK研究イノベーション)Creative Industriesは、大企業だけで構成されている産業ではありません。

むしろ、小さな企業や個人が非常に多い。だから、「大学が研究する」「大企業が事業化する」という二者だけでは、産業全体を動かせない。


その間にいる小さな事業者まで参加できるように、資金の流れを設計する。ここに、Creative Clusterという仕組みの一つの特徴があるように思います。


「つなぐ人」の給料は、どこから出るのか、ここまで考えると、前回の疑問が少し違って見えてきます。「つなぐ人を誰が雇うのか?」という問いです。


英国のクラスターでは、その人はクラスターという組織の中に置かれます。つまり、つなぐこと自体が、プロジェクトの予算に組み込まれている。ここが大きい。日本では、企業と大学を「紹介する」ことはあっても、「紹介した後に、プロジェクトを設計し、伴走し、関係者をつなぎ続ける」ところまで、独立した仕事として設計されているケースは、まだそれほど多くないように感じます。



もちろん、これは日本にそういう人がいないという意味ではありません。


産学連携コーディネーター、プロデューサー、インキュベーションマネージャー、地域おこしの担い手、デザイナーなど、似た機能を持つ人はすでに存在しています。ただ、それぞれが別々の制度や肩書きの中にいる。ここに、まだ考える余地があるのではないでしょうか。「人」にお金を払うのではなく、「関係が生まれる仕組み」にお金を払う


もう一つ、考え方を変えてみます。企業から、「人を紹介してほしい」と言われて、その紹介だけに料金を払ってもらう。これは、なかなか難しい仕事です。紹介した瞬間には、まだ何も生まれていないからです。


ところが、「企業の課題を整理する」↓「必要な専門家を探す」↓「共同プロジェクトを設計する」↓「実験する」↓「成果を形にする」↓「次の事業や市場につなげる」というところまで含めると、話が変わります。


それは単なる「紹介」ではなく、新しい価値が生まれるプロセスを設計する仕事になります。そして英国のCreative Clusterは、まさにそのプロセスに公的資金を入れている、と見ることができます。だから、最初のお金が重要になる。


新しい関係をつくる仕事には、少し難しいところがあります。

最初から企業に、「まだ何が生まれるかわかりませんが、関係をつくるためにお金をください」と言ってもらうのは難しい。企業からすれば、成果が見えないからです。そこで公的資金が最初のリスクを引き受ける。研究者と企業を集める。人を雇う。イベントを開く。実験する。小さなプロジェクトに資金を出す。そして、そこで生まれた成果を見た企業や投資家が、


「これは面白い」

「自分たちも参加したい」となる。その後に民間のお金が入ってくる。


もちろん、すべてのクラスターが同じように成功するわけではありません。また、追加投資のすべてをCreative Clusterだけの成果と考えることもできません。しかし、少なくとも英国の制度設計を見ると、公的資金を、最終的な事業費だけではなく、「新しい関係と可能性をつくるための初期投資」として使っていることは確認できます。(UK研究イノベーション)


では、個人の場合はどうなるのだろう

ここで、最初の問いに戻ってみます。「個人がCreative Clusterの役割を一部担えるのではないか?」という話です。もし一人の人間が、企業のことを理解し、デザインを理解し、研究や技術のこともある程度理解し、地域のことを知り、行政制度にもアクセスでき、さらに専門家を探してつなぐことができるなら。その人は、小さな規模ではありますが、「関係をつくるインフラ」になる可能性があります。


ただし、一番難しいのは、

「その人の活動を誰が支えるのか」です。「個人だから安い」ではなく、ここは、かなり重要だと思います。個人でやれば、「組織より安くできる」という話にしてしまうと、たぶん本質を外します。


むしろ逆です。一人の人間が持っている、経験、ネットワーク、専門知識、信頼、地域との関係、企業との関係、そして「何と何をつなげれば面白いか」を考える能力。こうしたものは、簡単には代替できません。だから、


「個人だから安く使える」のではなく、「個人だからこそ持てる横断性に価値がある」という考え方が必要なのではないでしょうか。小さな「Cluster」をつくる、例えば、地域の中に、「新しいことを考えたい中小企業」が10社ある。

そこに、デザイナーがいる。大学の研究者がいる。エンジニアがいる。地域の金融機関がいる。行政の支援制度がある。そして、それらを横断して話を聞いている人が一人いる。その人が、「この会社の課題と、この研究者の技術は組み合わせられないか?」「この企業の商品を、別の業界で使えないか?」「この技術を展示会でどう伝えるか?」「この二社を一緒にしたら、新しい商品ができないか?」と考える。


それだけでも、小さな「Cluster」のようなものは始められるかもしれません。


建物がなくてもいい。大きな組織でなくてもいい。重要なのは、関係が生まれ、そこから次の関係が生まれること。なのかもしれません。ただし、一人では限界もある。もちろん、ここで「一人のスーパーマン」をつくる話にしてはいけません。一人では、知識にも時間にも限界があります。


だからこそ、「一人が全部やる」のではなく、一人が、必要な人たちをつなぐ。という考え方のほうが現実的です。


本人はすべての専門家である必要はない。むしろ、「誰に聞けばいいか分かる」「誰と誰を組み合わせればいいか考えられる」「そのための最初の場をつくれる」ことが重要なのかもしれません。すると、見えてくるものがある


ここまで英国のCreative Industries Clustersを追いかけてきて、最初とは少し違う景色が見えてきました。


最初は、「英国にはCreative Clusterという面白い制度がある」と思っていました。でも、調べていくと、研究費がある。大学がある。企業がある。地域がある。そして、それらをつなぐ人がいる。さらに、その人が動くための予算がある。企業も参加する。民間資金も入ってくる。

小さな企業にも資金が届くようにする。つまり、単に「クリエイティブ産業を支援する」という話ではなく、人と人が出会い、新しいことを試し、それが事業につながっていくまでの循環を設計している。


そう見ると、Creative Clusterという言葉の意味も少し変わってきます。もしかすると、日本で考えるべきなのは「Cluster」ではないのかもしれない。ここまで来ると、僕自身の最初の問いにも戻ってきます。


「日本にもCreative Clusterをつくればいいのではないか?」たぶん、それだけではありません。日本にはすでに、大学があります。企業があります。デザイナーがいます。研究者がいます。行政があります。金融機関があります。地域の産業があります。そして、面白い技術や商品を持っている小さな会社もたくさんあります。足りないものがあるとすれば、


それらが持っている価値を見つけ、言葉にし、組み合わせ、プロジェクトにして、次の人につなぐ。そういう「関係をつくる仕事」なのかもしれません。そして、その仕事を、誰か一人の善意や熱意だけに頼らず、どうやって持続可能な仕事にするのか。


ここが、次の問いになりました。


英国のCreative Clusterは、その問いに対して、「公的資金を入口にする」という一つの答えを見せてくれています。では、日本の場合はどうなのか。行政が支えるのか。企業が支えるのか。大学が支えるのか。地域が支えるのか。あるいは、それらを組み合わせるのか。そして、もしそれを大きな組織ではなく、一人のデザイナーや、数人の小さなチームから始めるとしたら?


そのとき、どんな仕組みなら成立するのでしょうか。ここから先は、少し英国の話を離れて、


「日本ならどうするか」を考えてみたくなってきました。



※この連載は、筆者とAIとの対話を通じて生まれた思考の記録です。

 
 
 

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