英国のデザイン政策を調べていたら、色々考え始めた。3:redfrog greenfrog STUDIO
- redfroggreenfrog
- 1 日前
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では、誰が人と人をつないでいるのか?

前回、Creative Clusterについて調べながら、「人が集まるからClusterになるのではなく、人と人の間に新しい関係が生まれ続けるからClusterになるのではないか」と考えました。
そうなると、当然のように次の疑問が出てきます。
「では、その関係を誰が作っているのだろう?」
人は、ただ近くにいるだけでは、必ずしもつながりません。同じ大学の中にいても、研究室が違えば話す機会がない。同じ地域に企業が何百社あっても、お互いの技術を知らないこともある。まして、大学の研究者と小さなクリエイティブ企業、行政の担当者とゲーム開発者、製造業の技術者とデザイナーとなれば、そもそも接点がない方が普通です。
そこで、また英国のCreative Clusterについて調べてみました。
すると、少し面白いことが見えてきました。
「大学がある。企業がある。行政がある。だから自然にイノベーションが生まれる。」
どうも、そういう話ではないらしいのです。

実際、英国のCreative Industries Clusters Programmeでは、大学を中心に企業や研究機関などが組み合わされ、それぞれのクラスターにかなり大規模な運営体制が置かれています。2026年の※UKRIの公募資料を読むと、研究者だけでなく、プログラム管理や運営、財務、広報、イベント、さらに産業界に焦点を当てたproducerやindustry-focused rolesまで、必要な役割として具体的に挙げられています。
※UK Research and Innovation(英国研究・イノベーション機構)※※industry-focused roles(産業界との連携を担う人材)
つまり、「人を集めれば何かが起こる」というより、「何かが起こるように、人と人の間を動かす人」がいる。これは、私には少し意外でした。
例えば、大学の研究者が非常に面白い研究をしていたとします。
その研究が企業の新商品につながる可能性があるとしても、研究者自身が企業を探して営業するとは限りません。企業側も、大学の研究室を一軒ずつ訪ねて「何か使える研究はありませんか」と聞いて回るわけではありません。
そこで誰かが、「この研究者と、この企業は一度話してみたら面白いのではないか」と考える。
そして、紹介する。話してみる。
最初は何も起こらない。
しかし、数か月後に別の話が出てきて、「そういえば、以前紹介してもらった研究が使えるかもしれない」となる。
その間には、研究者でも企業経営者でもない人がいる。

私は、この「間にいる人」がかなり重要なのではないかと思い始めました。考えてみれば、展示会の仕事にも似たところがあります。クライアントから「新しい展示会ブースを作りたい」と相談されたとします。そこで、すぐに図面を描き始めることもできます。しかし、本当に必要なのは図面ではないことがあります。
「今回の展示会には、何のために出展するのですか?」
「新しい商品を知ってもらいたい。」
「誰に?」
「新しい顧客です。」
「どんな顧客ですか?」
「実は、これまでとは違う業界を考えています。」
ここまで話を聞くと、最初に依頼された「ブースデザイン」という仕事の意味が変わってきます。
場合によっては、展示する商品の見せ方だけではなく、誰に向けて何を伝えるのか、どんな企業との接点を作りたいのか、そもそも今回の展示会をどう位置付けるのか、といったところまで考える必要が出てくる。
デザインとは、目に見えるものを作る仕事だけではない。少なくとも私自身は、仕事を続ける中でそう感じるようになってきました。そして、Creative Clusterについて調べていると、この「目に見えない仕事」が、もっと大きなスケールで行われているように見えてきます。
研究者と企業をつなぐ。
企業と企業をつなぐ。
クリエイターと研究者をつなぐ。
地域と大学をつなぐ。
さらに、そこで生まれたアイデアを投資家や市場につなぐ。一つひとつを見ると、どれも特別なことには見えません。ところが、それを継続的に行う人がいて、そこへ公的な資金が入り、大学や企業が参加し、さらに外部から資金や人材が入ってくるようになると、だんだん「仕組み」のように見えてきます。
UKRI(英国研究・イノベーション機構)自身も、最初のCreative Industries Clusters Programmeについて、大学を「anchor institution(中核機関)」として、その周囲にスタートアップや中小企業を集め、技能開発や雇用創出を進め、さらに共同投資を呼び込んだと説明しています。第1期の9クラスターでは、UKRIによる約5,600万ポンドの投資を起点に、2024年3月までに公的・民間合わせて約2億7,700万ポンドの共同投資が生まれたとされています。
ここで、少し不思議な感じがしました。
最初にあるのは「お金」だけではない。「人を集める場所」だけでもない。研究だけでもない。企業だけでもない。
それらをつなぎ、動かし、次の人へ渡していく役割がある。
もしかすると、Creative Clusterの本当の価値は、建物や制度そのものではなく、その中で動いている「人」にあるのではないでしょうか。そう考えると、「Cluster Manager」という言葉も少し違って見えてきます。最初は、施設の管理者のようなものを想像していました。しかし、実際にはもっと複雑です。
誰と誰を会わせるのか。
どの企業の課題を、どの研究者に持っていくのか。
どのタイミングで資金を紹介するのか。
どのプロジェクトを育てるのか。
地域のどんな課題をテーマにするのか。
そして、そこで生まれた成果を、どうやって次の企業や人へ広げていくのか。
これは、かなり「プロデューサー」に近い仕事なのかもしれません。あるいは「編集者」と言った方が近いのかもしれません。異なる分野から材料を集めて、組み合わせ、意味を与え、次の人へ渡していく。そう考えると、私たちデザイナーが日頃やっていることとも、どこか重なってきます。もちろん、デザイナーなら誰でもできるという話でもありません。
研究者には研究者の専門性があります。企業には企業の論理があります。行政には行政の役割があります。投資家には投資家の判断があります。それぞれの専門性を持った人たちがいるからこそ、その間をつなぐ仕事にも専門性が必要になる。
そして、この「つなぐ仕事」は、何かを生産していないように見えて、実は新しい価値が生まれるための重要な条件なのかもしれません。
ここで、もう一つ面白いことに気付きました。
英国政府がCreative Clusterについて整理した資料でも、クラスターの成長を支える要素として、資金、人材、イノベーション、輸出、そして周辺のビジネス環境などが挙げられています。つまり、単にクリエイターを集めるだけではなく、資金、才能、研究、企業、市場などを含めた環境全体を見る必要があるということです。英国政府公式ウェブサイト「GOV.UK」

そうなると、Creative Clusterというものは、思っていたよりずっと大きなものなのかもしれません。そして同時に、少し小さな単位でも考えられるのではないかと思いました。例えば、大学の研究者が一人。企業が二、三社。デザイナーが一人。地域の団体が一つ。そこへ、必要なときだけ専門家や投資家が加わる。もし、この人たちを継続的につなぐ人が一人いたら。それだけでも、小さなClusterと呼べるのではないでしょうか。
まだこれは私の思いつきです。
英国の制度が、そのまま日本に適応するとは思いません。しかし、調べれば調べるほど、「大きな施設を作ること」より先に、「誰と誰をつなぐのか」ということを考える方が重要なのではないかと思えてきます。
そして、ここから先が、私にとって少し面白いところです。もしCreative Clusterの重要な仕事の一つが、「人と人をつなぐこと」だとしたら、その役割は、必ずしも大きな組織にしかできないのでしょうか。行政でなければできないのでしょうか。大学でなければできないのでしょうか。あるいは、大きな予算がなければ始められないのでしょうか。
もう少し英国を調べてみる必要があります。
なぜなら、次に気になってきたのは、「では、実際にその人たちは、どのようにして活動しているのか」ということだからです。そして、さらに気になることがあります。人と人をつなぐだけなら、ボランティア的な活動においても可能です。
しかし、それを仕事として続けるには、当然ながら時間も必要です。では、その仕事には誰がお金を払うのでしょうか。そして、その活動に公的なお金が入るとしたら、なぜ政府はそこへ投資するのでしょうか。どうやら次は、「つなぐ人」から「お金の流れ」へ進まなければならないようです。英国を調べているだけなのに、少しずつ、最初には想像していなかったところへ話が進んできました。
次回は、Creative Clusterを動かすための「お金」について調べてみたいと思います。
※この連載は、筆者とAIとの対話を通じて生まれた思考の記録です。




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