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英国のデザイン政策を調べていたら、色々考え始めた。4:redfrog greenfrog STUDIO

  • redfroggreenfrog
  • 1 日前
  • 読了時間: 7分

研究は、研究室から出たあと何になるのか?


前回、Creative Clusterについて調べながら、「人と人をつなぐ人」がいることに気付きました。大学の研究者と企業をつなぐ。企業と企業をつなぐ。クリエイターと研究者をつなぐ。地域と大学をつなぐ。さらに、そこから生まれたアイデアを市場や投資へつなぐ。調べてみると、どうやらCreative Clusterというものは、こうした「つなぐ仕事」の積み重ねによって動いているようです。


そうなると、次に気になることがあります。「その仕組みを動かすお金は、どこから来るのだろう?」


もちろん、大学にも企業にも、それぞれ予算があり、その中には研究費もありますし、企業には新規事業のための投資もある。ところが、まだある程度の規模になり得るかどうか分からないアイデアに対して、企業が最初から大きなお金を出すのは簡単ではありません。


大学の研究者からすれば、「これは将来、社会に役立つかもしれない」という研究はあっても、それがいつ、どのような商品やサービスになるのかは分からない。企業からすれば、「面白そうだけれど、本当に事業になるのだろうか」ということになります。研究と事業の間には、どうしても距離があり、その距離を埋めるためには、人が必要です。そして、時間も。さらに、お金も必要。


そこで英国について調べていると、何度も登場する名前がありました。

UK Research and Innovation、UKRIです。


日本語にすれば、英国の研究・イノベーションを支援する公的な機関、といったところでしょうか。最初は、研究費を配る機関なのだろうと思いました。「研究費を出すところなら、日本にもありますよね。」そう思って、またAIに聞いてみました。「UKRIは、日本でいうと何に近いのでしょう?」すると、「一つの組織に完全に対応する日本の機関を探すのは難しいです」という答えが返ってきました。少し調べてみると、


UKRIは、単純に一つの研究助成機関というより、英国の研究・イノベーションを支える大きな枠組みです。その中には、分野ごとの(注1)Research Councilsや(注2)Innovate UK、(注3 R)Research Englandなどが関わっています。そしてCreative Industries Clusters Programmeでは、そのUKRIの一部である(注4)Arts and Humanities Research Council、つまりAHRCが中心となってプログラムを運営しています。


注1 Research Councils:研究会議(英国の分野別研究助成を担う組織群。固有の制度名称として「研究会議」とするのが適切)

注2 Innovate UK:英国イノベーション機構(企業のイノベーションや事業化を支援するUKRI傘下の組織)

注3 Research England:イングランド研究機構(イングランドの大学・研究基盤などを支援するUKRI傘下の組織)

注4 UKRIには、分野ごとの研究を支援する「研究会議(Research Councils)」があり、その一つに芸術・人文科学研究会議(Arts and Humanities Research Council、AHRC)があります。


ここで、また少し話が複雑になってきました。

「研究費を出す」というだけなら、それほど不思議ではありません。しかし、Creative Industries Clusters Programmeの仕組みを見ていくと、単に研究者へお金を渡して終わり、という設計ではありませんでした。2018年に始まった最初のプログラムでは、約5,600万ポンドの資金によって9つのCreative Industries Clusterが作られました。それぞれのクラスターでは、大学を中核的な拠点として、クリエイティブ産業の企業や研究者などが共同で研究開発に取り組みました。 ここで面白いのは、研究のテーマです。単純に「研究者が研究したいこと」を研究するのではありません。

Creative Industries Clusters Programmeの目的には、産業界が抱える課題を見つけ、それを共同研究によって解決し、産業の成長につなげることが含まれていました。つまり、研究能力と産業側のニーズを組み合わせることが、最初から仕組みの中に組み込まれていたのです。


これは、少し考えさせられます。


研究には研究の論理があります。企業には企業の論理があります。大学には大学の論理があります。それぞれが問題があるわけではありません。むしろ、それぞれの立場があるからこそ専門性が生まれます。問題は、その専門性が別々の場所に置かれているときです。研究者は企業の課題を知らない。企業は大学で何が研究されているのか知らない。クリエイターは、研究者が持っている技術を知らない。投資家は、その研究がどこまで進んでいるのか分からない。


そこで誰かが、「この研究と、この企業を一度つないでみよう。」と考える。そして、そのための時間と費用を公的資金が支える。


ここまで来ると、研究費の意味が少し変わって見えてきます。研究そのものに対してお金を出しているだけではなく「研究が社会の別の場所で活躍するための費用」にも、お金を出している。そう考えることができるのではないでしょうか。


実際、UKRIのCreative Industries Clusters Programmeでは、研究開発だけではなく、企業との連携、技能開発、資金へのアクセス、市場への道筋、他のクラスターとのネットワークなども重要な要素として扱われており、2024年に公表されたプログラム評価でも、産業界との持続的な関係を作ることや、クリエイティブ産業のR&D活動を成長させることが主要な目的として示されています。


そして、ここで一つ驚いた数字が出てきました。


最初のCreative Industries Clusters Programmeに対するUKRIの投資は約5,600万ポンドでした。ところが、その後に動いた公的・民間の共同投資は、2億7,000万ポンドを超えたとUKRIは説明しています。単純に割ると、最初の1ポンドに対して、およそ5ポンドの追加的な資金が動いたことになります。 「これは、どういうことなのだろう?」ここで、また疑問が生まれました。


UKRIが全部のお金を出したわけではありません。


では、なぜ民間企業やその他の資金まで動いたのでしょうか。公的機関がお金を出すと、「これは国が認めたプロジェクトだから」という信用が生まれるのでしょうか。それとも、大学と企業がすでに共同で取り組んでいることで、投資する側にとってリスクが小さく見えるのでしょうか。

あるいは、研究だけでは事業にならないところを、Clusterの中にいる人たちがつないでいくことで、「これは事業になるかもしれない」というところまで持っていくのでしょうか。


おそらく、答えは一つではありません。


しかし、ここで重要なのは、公的資金が最終目的ではなく、次の動きを生み出すための起点として使われているように見えることです。これは、かなり面白い考え方です。例えば、100万円を使って100万円分の仕事をする。それなら、100万円の事業です。しかし、100万円を使って、人を集め、研究を行い、企業と出会い、試作品を作り、そこから別の企業が500万円を投資する。さらに、その企業が別の市場へ進出する。


そうなると、最初の100万円の意味は、単純な「支出」とは少し違ってきます。


次のお金を動かすための最初のお金。そんな見方もできるのかもしれません。そして、ここで私の中に、展示会の仕事との共通点がまた一つ浮かんできました。展示会でも、ブースそのものが最終目的ではありません。ブースを作る。人が来る。話をする。名刺を交換する。商談が始まる。新しい企業とつながる。場合によっては、新しい商品や事業が生まれる。そう考えると、展示会のブースも、単なる「空間」ではなく、次の行動を起こすための装置と考えることができ、Creative Clusterも、少し似ているのかもしれません。


大学を中心に人が集まる。研究をする。企業と出会う。プロジェクトが生まれる。そこへ資金が入る。そして、その成果がまた次の人や企業を呼び込む。最初にあったのは、必ずしも完成された事業でなく、「何か面白いことが起こるかもしれない」という、小さな可能性です。


そこへ、人と知識と時間と、そして最初のお金を投入する。そう考えると、UKRIがやっていることは、研究費を配るというよりも、可能性が循環し始めるところまで、最初の力を加えることなのかもしれません。もちろん、これはまだ私の解釈です。


公的資金が入れば必ず民間投資が生まれるわけではありませんし、5倍という数字だけを見て「成功」と判断することもできません。実際の評価では、経済的な成果だけでなく、雇用、研究開発、企業間連携、知識移転など、さまざまな指標からプログラムの効果が検証されています。

それでも、この仕組みを見ていると、気になることが、なぜ、英国では公的なお金を使って、民間のお金まで動かそうとするのだろう?そして、もっと気になることがあります。なぜ民間側は、そのお金を出すのだろう?もしそこに何らかの理由があるのなら、それは「英国だから」という話ではないのかもしれません。日本でも、産学官連携や研究開発支援という言葉は、ずっと使われています。では、同じような仕組みを作ったとき、実際にお金は動くのでしょうか。そして、もし動かないとしたら、何が足りないのでしょうか。


……などと考えていると、また英国の話から少し離れてしまいます。


今回は、ここまでにしておこうと思います。


次回はもう少し踏み込んで、「では、UKRIは具体的にどのようにして、研究・企業・投資をつないでいるのか」を調べてみたいと思います。そして、できれば実際のプロジェクトを一つ選んで、


「誰が、誰に、何のために、いくら出して、その結果、次に誰がお金を出したのか。」


そこまで追いかけてみたいと思います。※この連載は、筆者とAIとの対話を通じて生まれた思考の記録です。

 
 
 

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