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英国のデザイン政策を調べていたら、色々考え始めた。5:redfrog greenfrog STUDIO

  • redfroggreenfrog
  • 15 時間前
  • 読了時間: 7分

UKRIは、いったい何にお金を出しているのか?


前回、英国のCreative Clusterについて調べていて、少し気になる数字に出会いました。最初のCreative Industries Clusters Programmeでは、英国の公的な研究・イノベーション支援機関であるUKRIが、約5,600万ポンド(約121億円)を投じました。そして、その後に動いた公的・民間の追加投資は2億7,000万ポンド(約585億円)を超えたと、UKRI自身が説明しています。単純に考えれば、最初の1ポンドに対して、約5ポンドの資金が後から動いたことになります。(UKRI)


そこで、また疑問が生まれました。


「では、UKRIはいったい何にお金を出したのだろう?」


最初は、当然のように「研究費」だと思っていました。研究者が研究をするための費用を出す。研究成果が出れば、それを企業が利用する。そういう仕組みなのだろうと。


ところが、Creative Industries Clusters Programmeについて詳しく調べてみると、少し様子が違います。


2018年に始まった最初のプログラムでは、UKRIのChallenge Fundを使い、Arts and Humanities Research Council、つまりAHRCが中心となって、9つのCreative Industries Clusterを支援しました。5年間で約5,600万ポンドを投資し、それぞれのクラスターは大学を中核的な拠点として、企業や研究者などが共同でR&Dに取り組む形になっていました。(UKRI)


ここで、少し言葉を整理しておきたいと思います。


R&DとはResearch and Development、つまり研究開発です。


「研究」と聞くと、私は以前なら大学の研究室を思い浮かべていました。研究者がテーマを決めて、実験をして、論文を書いて、成果を発表する。もちろん、それも研究です。しかし、Creative Industries Clustersで重視されているのは、研究をそこで終わらせないことでした。


新しい製品を作る。

新しいサービスを作る。

新しい体験を作る。

新しいビジネスにつなげる。


そして、地域の企業や産業そのものの成長につなげる。つまり、研究を「知識を生み出す活動」としてだけではなく、「新しい価値が生まれるところまで持っていく活動」として捉えているようです。


ここが、私には面白く感じられました。


例えば、ある大学に非常に優秀な研究者がいたとして、その研究者が、新しい画像処理技術を研究している。別のところには、映像制作をしている会社がある。さらに別のところには、その技術を使えば面白いサービスを作れそうなスタートアップがあり、そして、デザイナーがいる。投資家もいる。それぞれ単独では、何も起こらないかもしれません。


しかし、誰かが、

「この研究者と、この会社を一度会わせてみよう。」と考えると、そこで話が始まる。「この技術、映像制作に使えるかもしれませんね。」「それなら、こういう実験をしてみましょう。」「もし実現できれば、こういうサービスにできそうです。」「その段階まで行けば、投資を検討できます。」


こうして考えると、研究費そのものよりも、その周囲にある「つなぐ仕組み」が重要になってきます。


そして、UKRIがCreative Industries Clustersに投資しているのは、どうもその部分まで含んでいるようなのです。


実際、UKRIはCreative Industries Clustersについて、大学、企業、地方・地域の政策担当者、民間の資金提供者を結びつけ、研究・イノベーションと成長を生み出す仕組みだと説明しています。現在進んでいる第2ラウンドでも、単に研究を行うことではなく、特定の地域やクリエイティブ分野が抱える課題に取り組み、商業的な可能性を持つ新しい製品、サービス、体験を生み出すことが条件になっています。(UKRI)


ここまで来ると、「研究費」という言葉だけでは少し足りない気がしてきます。では、何と呼べば良いのでしょう。「研究開発への投資」?もちろん、それも間違いではありません。しかし、私には、「可能性が生まれる環境への投資」という言葉の方が、少し近いように思えます。まだ事業になっていない。まだ商品にもなっていない。まだ市場があるかどうかも分からない。でも、研究者がいて、企業がいて、クリエイターがいて、そこに課題があり、技術があり、アイデアがある。その人たちが出会うための時間と場所と人材を用意する。そして、最初の研究開発に必要な資金を投入する。その結果として、新しい製品やサービスが生まれるかもしれない。企業が成長するかもしれない。新しい雇用が生まれるかもしれない。さらに別の企業が投資するかもしれない。


つまり、最初に投入したお金が、それだけで終わることを想定していない。その先にある「次の動き」を期待している。


ここが、どうも重要なようです。


実際、最初の9つのクラスターについてUKRIが公表している成果を見ると、5,500人を超える雇用を創出し、460を超えるスピンアウト、スタートアップ、スケールアップを支援し、780を超える新しい製品・サービスの開発につながったとされています。また、5,000人以上が訓練を受け、2億7,000万ポンドを超える公的・民間の共同投資が生まれたとされています。(UKRI)


もちろん、これらすべてをUKRIの資金だけの成果だと考えることはできません。


そこは注意が必要です。


一つの政策があって、その結果としてすべての数字が生まれた、という単純な話ではありません。

それでも、少なくとも英国側は、このような「最初の公的投資から、その先の民間投資や事業活動を生み出す」という流れを、政策の成果として明確に捉えています。


ここで、また展示会のことを考えてしまいました。


展示会に出展する企業にとって、ブースを作ること自体が目的ではありません。


ブースを作る。

人が来る。

説明する。

商談する。

新しい企業と知り合う。

試作品を見せる。

後日、もう一度打ち合わせをする。

そして、受注につながる。場合によっては、新しい市場が見つかる。


ブースという「目に見えるもの」は、その一連の流れの最初の装置に過ぎません。


Creative Clusterも、それと少し似ているのではないか。大学や研究者、企業、クリエイターが集まっていることそのものが成果なのではない。そこから次の行動が起こること。それが重要なのではないでしょうか。


そう考えると、UKRIが「研究費を出す」という行為も、少し違って見えてきます。


研究者にお金を渡し、研究をしてもらう。それだけではありません。研究者と企業をつなぐ。企業が研究に参加する。クリエイターが別の視点を加える。研究成果を製品やサービスへ近づける。その可能性が見えてきたところで、さらに別の資金が入ってくる。

その循環を最初から設計している。そう考えると、UKRIの役割は、かなり興味深いものに見えてきます。


ところで、ここで一つ気になることがあります。


UKRIは、どうしてこのような仕組みにお金を出すのでしょうか。政府から見れば、公的なお金です。当然、説明責任があります。「なぜこの研究にお金を出すのか?」「なぜこの地域なのか?」「なぜこの企業なのか?」「その結果、何が社会に戻ってくるのか?」こうした問いに答えなければなりません。だからこそ、単純に「面白そうだから」という理由だけでは、おそらく予算は付きません。そこには、政策としての目的があります。地域経済を成長させる。企業の研究開発能力を高める。新しい産業を育てる。雇用を生み出す。人材を育てる。


そして、英国のクリエイティブ産業を国際的に競争できるものにする。


Creative Industries Clustersの現在の第2ラウンドでも、地域の能力を強化し、雇用や技能、製品、サービス、体験を生み出し、民間資金との共同投資を促すことが明確に掲げられています。(UKRI)


ここまで調べて、ようやく少し分かってきました。UKRIは、「研究をする人」にだけお金を出しているわけではない。研究と産業の間にある距離を縮めること。地域の中に新しい能力を作ること。そして、そこから次の投資や事業が生まれる可能性を高めること。そういうところまで含めて、投資している。


ただし、まだ明確ではないことがあります。


では、そのお金は具体的に、誰の手に渡るのでしょうか。大学でしょうか。研究者でしょうか。企業でしょうか。Clusterを運営する組織でしょうか。そして、そのお金は「研究費」なのでしょうか。「人件費」なのでしょうか。「設備費」なのでしょうか。それとも、もっと別の名目なのでしょうか。


ここが分からなければ、仕組みの本当の姿はまだ見えてきません。


そこで次回は、少しやり方を変えてみたいと思います。


英国全体の政策を眺めるのではなく、一つのCreative Clusterを選んで、その中で実際に「誰が、何をして、どこからお金が入り、何に使われたのか」を追いかけてみます。


制度の説明から、実際の現場へ。


そうすれば、これまで見てきた「人」「研究」「企業」「資金」というものが、一本の線としてつながって見えてくるかもしれません。※この連載は、筆者とAIとの対話を通じて生まれた思考の記録です。

 
 
 

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